みずほ銀行オンライン・システム障害について 〜 注44

公開: 2021年12月2日

更新: 2021年12月3日

注44. 終身雇用制における専門家人材のリスク

日本社会で大学教育を学んだ学生にとっては、特に、技術系の専門を学んだ人材には、その技術を応用する製品の開発や製造を専門とする メーカ企業以外に就職することには、大きなリスクを孕んでいる。それは、終身雇用制によって、自分が学んだ専門以外の知識を要求される職務に従事しなければならない部署への転属を命じられる可能性が大きいからである。特に、メーカ企業以外の場合、企業に入社して何年か経過すると、自分が大学で学んだ専門とは無関係な知識を必要とする部門への転属が命じられる例が多いからである。

自分が学んだ専門が所属する組織の業務に直結している場合、その分野の仕事を続けられる可能性が高く、仮に、学んだ専門とは異なる専門知識を必要とする分野、例えば、人事部門など、への転属が命じられても、管理の対象となる従業員が、自分と同じか、似たような知識を学んだ人々であるため、自分自身の経験や知識を活かして業務を遂行できる。その意味で、学んだ専門とは全く異なる分野の企業で働く場合とは、リスクの大きさが異なる。

終身雇用制ではなく、職務記述書に基づいた雇用契約を基礎とする米国社会のエクゼンプト制で働く技術者の場合、日本社会のような入社時に想定しないような職務への移動を命じられることはない。給与は、確定的で、職務が変わらない限り、上下することはない。職務を変えるためには、退職して大学へ再入学し、新しい分野の専門を学ぶことが前提となる。この雇用慣習の違いから、米国企業では、それぞれの専門分野を学んだ人材が、連携して働いている職場が多い。社会における雇用の流動性が、個人の就業におけるリスクを吸収する仕組みになっている。

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